バレンタインデー

 2月14日は母親の誕生日なので、両親が帰る日、13日のうちに皆にチョコを渡した。自己紹介でこの町に住んでいると言うと「それじゃ、あのケーキ屋さんの近く?」と聞かれることがある名古屋では有名な店が近所にあって、そこはチョコレートがおいしいお店。隣町へ向かう坂道の途中の中ぐらいのマンションの一階に有る店で、中が白くがらんとしていて、ショーウインドーに余白の美のように数種類ケーキが並ぶ敷居が高そうなお店なの。以前にゃと通りがかったとき店内に少しだけ有る席でコジャレた大人の男女がケーキ食べてたのが絵になっていて、その記憶も敷居を高くしてた。日曜日、初めて入ってみたの。珈琲カップや貝殻やハートの小箱なんかの形にチョコで造った器にトリュフを三つ入れたのがあって、これを皆のぶん、そして誕生日の母のためにザッハトルテをホールで。持ち帰って元気に皆にチョコを配り、父のを一個試食。すっごくおいしい! 食べたときは、中のガナッシュがやわらかいって思うくらいなんだけど、チョコが溶けて行くときのさーっと無くなってくあたりで、これはおいしいチョコだ! ってわかりだす。おいしいおいしい、ってそのあと食べたザッハトルテもやっぱりおいしくって、ホールで買ってきて多かったかな、なんて反省が不要だったし6つ切りしてみんな一個づつ食べて、あとは母親が当然のように全部持ち帰った(ラップに包んで)。食べる前に写真撮れば良かったなんて言って上機嫌だったし、少しでも気に入らないところには欠かさず突っ込みを入れる母をおとなしくしたケーキ、さすがだ。
 名古屋って、店構えがいけてて内装も素敵でお客さんもいっぱいの店でも食べてみると「あらら?」っていう、味を目指しきれてない店ってのと、こんな風に本当においしいものを食べられる店がマーブルで存在していて、味の違いは一目瞭然なのに、どちらも一流店、人気店、雑誌に載る店、お洒落で美味しい店、という同一のくくりで語られ、同じような人気のありかたをしているようなところがある。間違っておいしくないほうの店に入ったとき、ちきしょうやられたって思うし、美味しいとこを見つけると胸のリストにしっかと刻まれる。