空気

 一週間働いた記憶が無い。金曜日って聞いてもどうにも信じられない。起きて出かけて働いておべんと食べて働いてと毎日同じ事をしていたからぴったり重なってしまって五日間の時間の厚みがゼロに消えたのだ。四次元を四次元目の軸の先端から見るとこんな風になるのかな。気持ちよく軽く、人心地ついてない位置に座した偶然を楽しむ。疲れない。軽やかで、気持ち良い。どろどろ働き気持ち悪く感じまくり過ごしたつらい一週間の長さを、見てみぬ振りをするという慣習を用いることでコンパクトにして過ぎた記憶に保管するのとは違って、このようにいくつかの要因によりある次元を無いものとみなし考慮するリストから削ることができることによりそこの物量がゼロになるから薄く軽く固く透明感もあり大変扱いやすい記憶となる。気持ちが良い。これには今回の職場で初めて試みた「上は毎日白シャツ」という自分のなかだけでの取決めもかなりの効果をもたらしているような気がする。毎日ワイシャツを着て働くような男の頭の記憶の倉庫の中は、女が覗いたらびっくりするほど簡潔かもしれない。